2009.10.5
ロジャー・マッギンのこと

 私は60年代初期のいわゆるアメリカのフォークソングリバイバルにリアルタイムで接しているわけではないのだが、自分がフォークソングというものと初めて接したのは彼が率いるザ・バーズを通してであった。
フォークソングの旗手と呼ばれていた当時のボブ・ディランの曲、ミスター・タンブリンマンをロックの様式で演奏して一躍全米ヒットチャートに躍り出た、というのがザ・バーズのお決まりの紹介文句であった。
なのだが、私がザ・バーズらしいと思う曲を挙げてみると、3枚目のアルバム、"FIFTH DIMENSION" *1の中の"WILD MOUNTAIN THYME"や"JOHN RILEY"、8枚目のアルバム、"BALLAD OF EASY RIDER" *2の中の"JACK TARR THE SAILOR"と言ったところである。当時のレコードジャケットの解説によると、これらは古いイギリスの民謡で、リーダーのロジャー・マッギンが取り上げたとのことであった。
60年代初期のアメリカのフォークソングリバイバルはイギリスやアイルランドから渡ってきた最初の移民が持ち込んだ音楽が北米で根付いたおよそ19世紀頃の曲が取り上げられることが多いようだが、彼が取り上げたこれらの民謡は移民が渡る遥か以前の時代である。彼は当時のフォークソングリバイバルのまさに当事者であるが、目を付けたのがそうしたかなり古い民謡であったというところがロジャー・マッギンならではというところか。
彼の本名はJames Joseph McGuinn IIIと言うそうだが、三世というからにはなにやら名門のような? 名前のルーツを調べてみたところ、McGuinnはMacQuinn から変化したもので、文献に出てくる最古は西暦1027年、Macは息子を示し、Quinn は北部アイルランドのTyrone郡によく見られる名前だそうである。McGuinn家の家紋はこちら
90年代にエンヤの登場をきっかけにチーフタンズの再評価や第二期フォークソングリバイバルとも言うべきアイリッシュルーツ溯上ムーブメントが北米で起きたが、ロジャー・マッギンの溯上はそれよりおよそ30年前ということになる。
初期のザ・バーズは珈琲というよりは紅茶の香りという感じがしていたのはそのせいなのだろうか?

*1:"FIFTH DIMENSION"1966

*2:"BALLAD OF EASY RIDER"1969

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