Something's Wrong
楽しい事ばかりのガキの時分、
頭の上をトンビが舞い、小鳥がさえずるなんて悪いもんじゃなかった。
夏の早朝、あるいは昼下がりのトウモロコシ畑で、
人生、この先まだまだ続くのか?
あるいは、もうこれまでか?
俺はいったい何者なのか? 頭の中で浮かんでは消える。
そういう場所ってあるもんだ。
この土地で死ぬまで生きてゆく理由を探すなんてもうやめた。
Now something's Wrong=でも今も、何かおかしい。
Sherwoodのネオンサインを目の前にしていても同じだ。
written by Gene Clark
from "The Fantastic Expedition of Dillard & Clark*2"
ネオンサイン:原文では,"Neon brambles=ネオンの木いちご" だが、道路端に埋め込まれている発光式の標識を喩えたものらしい。
今では、"Neon brambles" はジーン・クラークファンの間では愛称のように使われている。
For a Spanish Guitar
海鳴りは深さの違いで不協和音を奏でる。
近からず遠からず、時代の歌が入れ替わっていくように。
波濤は年老いた主人のラッパのごとく、
自由な人間と奴隷を選り分け、
彼らは互いに判らないようにささやきあう。
太陽と雨の営みと、
思い描いた夢は未だ消えず。
スパニッシュギターには脳を突き抜けるような魂の鼓動がある。
通りに座り込む乞食は王位失墜のごとく惨めだ。
やつにそんな富があったなんて思いもよらない。
子供達の笑い声は未だファンタジーが壊れていない証だ
そして説教が通じない証だ
善なのか悪なのか狂気なのか
答えは見つからない
スパニッシュギターには脳を突き抜けるような魂の鼓動がある
スパニッシュギターを弾いてみる
君がスキップしながら歌う箇所を一小節毎に太陽が照らすごとく
木立の中から笑い声が起こるごとく
かもめがそよ風に乗って舞い上がるごとく
君が望むように、あるいは気付かれないように雨の中に立ち尽くすごとく
written by Gene Clark
from "Gene Clark*4"
Silver Raven
ワタリカラスを見たか?
天翔る翼を持ち
遥か暗い海の上を、遥か荒れた空の上を
川が移ろいゆくのを見たか?
死期が訪れるのを待つように
やがて潮の流れとなり、海が泣き出すのを
星空と海の境が移ろい行くのを見たか?
陽光が空を区切り、世界はお前の夢で区切られる
古い言葉は朽ち
新しい言葉で生まれ変わる
ワタリカラスを見たか?
微かにきらりと輝く翼を持ち
微かに、ほんとうに微かにきらりとさせる
太陽が弧を描きながら通り過ぎてゆくのを待ち構えて
そうやって彼女の妹達に伝えんと試み始める
written by Gene Clark
from "No Other*7"
アメリカンインディアンでは、カラスは知性と創造の象徴とされ、伝説の重要な主とのこと。
Gypsy Rider
もう一度マシーンのエンジンをかけ
ほおを風にさらし
まだ尋ねたことのない道を探して
カセットが奏でるメロディーを口ずさめば
ハイウェイのシンフォニーだ
女にはけして判るまい
ジプシーライダーはカセットのシンフォニーに合わせて歌うだって?
言わなくたって判るさ
お前のやっていることは浮浪者と同じだと、彼女だってもはや判っているさ
お前はこの道を二度と通ることはあるまい
不吉の予兆
壁の張り紙はやがて剥がれる
お前は、お前が書き残した通りになっている
それを受け入れると決めたならやり通せるだろう
受けるに値する物は受け取り、残すべき物には手を付けるな
written by Gene Clark
from "So Rebellious a Lover*12"
カセット:原文では,"2-wheeled melody" だが、これはバイクの2輪に重ねたカセットテープの中で回る2つのリールの事と思われる。
恐らくハーレー・デイビッドソンに装備されていたオーディオ装置の意味とホームレスが携えているラジカセの意味と思われる。
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