2012.5.13
Henry Diltz と Gary Burdenのこと:

 Youtubeを見ていたら ”A history of 1960's album art - UNDER THE COVERS” なるものに目が止まった。二人の年配の男性がホスト役になって当時ヒットしたレコードのジャケットを懐古するアメリカのTV向けの特集番組らしい。その男性は顔に深い皺を刻み、恐らく70歳を越えているように見たのだが、なんとなく見覚えのある顔だなあと思っていたらテロップが流れ、Henry Diltz と Gary Burden という名前が出て来て、”あっ!!” となった次第である。
 この二人の名前は高校生の時にしっかり記憶していて懐かしさがこみ上げてきたのであった。高校3年生の夏休みに手に入れたデビッド・クロスビーのファーストソロアルバム ”IF I COULD ONLY REMEMBER MY NAME”*の中ジャケは、このアルバム制作に携わった多くのミュージシャンやスタッフのポートレートで埋め尽くされていたのだが、二人はこの中に居たのである。なんという変わり様!いや自分も例外ではないが....
 若いカメラマン姿のHenry Diltzと、当時まだ新々気鋭のデザイナーだったGary Burdenの姿はおよそ40年ほど自分の頭の引き出しに仕舞ったままだったのだから。 二人はポピュラー音楽のアーティストを専門に写す写真家とアルバムカバーデザインを手掛けるデザイナーなのだが、気が付いたらグラミー賞の常連になっていたのであった。
 この番組でも私にとって印象深いアルバムジャケットがいくつも紹介されていて嬉しい限りである。誰しも経験があると思うが、アルバムジャケットというのは青春時代の思い出と密接に結びついているものだ。教室で誰かが広げていると廻りにクラスメイトが寄って来る。”こいつはこんなのを聴いているのか!?” と多少の胸騒ぎを覚えたものだ。また、試験勉強の合間に取り出して眺めては将来の進むべき道が浮かんでは消えたものである。
 ところで、この番組の最後のGary Burdenのコメントがとても印象深かく、彼らの仕事に対する誇りのようなものが滲み出ていると感じた次第である。

"今はCDジャケットはこんなちっぽけで薄っぺらになってしまった。あの頃、僕らはレコードジャケットを大きく広げて音楽の背景にあるものや、音楽では表せないアーティストの本音がどこかに潜んでいないか? 謎解きでもするように食い入るように見つめたものだ。”

*:"IF I COULD ONLY REMEMBER MY NAME"
by David Crosby 1971

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