●Making Of OKUTAMA STORY
奥多摩物語の制作過程をご紹介します
アコースティック楽器で多重録音作品を!!
「多重録音と言うとシンセサイザ−ですか?」と聞かれることが殆どです。
ですが、奥多摩物語ではペダルスティールギターを除き、すべてアコースティック楽器を用いています。
民族楽器も含めたお気に入りの弦楽器でアンサンブルをしたい・・・ これが高校卒業の頃の最初の夢でした。メンバーは集まるか?楽器は集まるか?演奏するにはスコアも書かねば・・・ それはとても困難に思えました。絵画や多色刷り版画を制作するように自分一人の手で気の済むまで作りあげられないものか?。
多重録音を行えば一人でもアンサンブルは可能です。しかしながら当時はマルチトラックレコーダーは個人で扱えるような道具ではありませんでした。なかば諦めて数年が経過しました。そんな折、奥多摩の山歩きがきっかけで知り合った音楽家から民生用のマルチトラックレコーダーが出ている事を知らされました。これなら自分も実現できるかもしれない・・・ しかし使ってみたい楽器の全てを弾ける様になる自信はないし、ひとつひとつ基礎からやっていては一生かかっても無理か?
今、振り返ってみると、構想から実現に辿りつくまでにはおよそ15年の歳月が必要でしたが、それはあっと言う間でした。少しずつ楽器を集めたものの、手探り状態でした。しかし、あれも弾きたい、これも使ってみたい。願いは大きくなるばかりです。 基礎練習なるものが嫌いで、弾きたい曲からいきなり始めるというのが自分の流儀でしたので、とにかく楽器が手に入るチャンスがあったら躊躇せず入手し、録音に入るときにその楽曲を仕上げるのに必要充分な練習をするといったやり方になりました。
どんな楽器も弾きたい旋律や出したい音色がはっきりしていればなんとかなるものです。こうして私にとって楽器は画材と同じようになりました。
どんな楽器を使うのか?
基本的にはギター、マンドリンが主体です。それで下地を作り、ダルシマ、筝、バンジョー、フィドル、チェロ等を加えていきます。 最初に楽器(画材)ありきではなく、音色ありきといったところです。 欲しい音色を得る為には同じ楽器や異種楽器をユニゾンで重ねたり、演奏法、録音やミキシングの工夫、例えば、ギターでも、そのなかから特定の響きだけを取り出すためにアタックの部分をカットするようなことも行います。
民族楽器は現代の楽器が洗練(蒸留)の過程で濾し取られてしまった多彩で微妙な音色を含んでいます。どうしても現代の楽器で得られない音色は民族楽器を頼りにします。 旋律にはパンパイプやオカリナも使います。中には楽器ではない道具や玩具もあります。
使用楽器:
6 &12弦アコースティックギター
5弦バンジョー
マンドリン
ブズーキ
フィドル
チェロ
ハンマードダルシマ
マウンテンダルシマ
ペダルスティールギター
ISO式箏
17絃
筑前琵琶
ピアノ
ISO式アコーディオン
ハーモニカ
オカリナ
パンパイプ
尺八
篳篥
弥生土笛
あんま笛
シンギングボウル
でんでん太鼓
ISO式大太鼓
拍子木
キュイー
フーホー
鈴
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ライブはできるか?
もうお分かりのように、残念ながらCDで聞こえるようなことを演奏会という形で再現するのは不可能なのです。途切れ途切れの演奏を何回も重ねたり繋ぎ合わせたり、音質を調整したりするからです。絵画や多色刷り版画のように音楽を制作したいと言うのはそういうことなのです。ちょうど演劇と映画の関係に似ています。 反面、ライブのような音楽としてのノリ、グルーブ感というのは望むべくもありません。ベストギグ、名演奏という言葉はいつも私の憧れです。
奥多摩は楽曲の制作にどうかかわるのか?
最初のスケッチなりモチーフは楽器をただ鳴らしているときにぽつっと出てきます。音色がモチーフになるという例が多いですね。そうなればすぐレコーダーに向かい録音を始めます。楽器を重ねたり、ミキシングをしていく過程で、奥多摩で体験した情景が思い出され、ああしようこうしてみようという次の動機となり、これが繰り返されます。山の情景や思い出に寄り添うような音楽にしていこうと思うわけです。大方まとまってくると、この曲はあの情景にしよう、あの事件にしようと標題が決まってくるわけです。