2018.8.16
楽曲エッセイ:
Wind And Rain/Flying Burrito Bros.
Melodies From A Bird In Flyght (for Clarence)/Gene Parsons 亡き友に捧げる

 今回は2曲いっしょにとりあげようと思う。
"Wind And Rain" は1975年リリースのFlying Burrito Bros.の4作目、“Flying Again" の中に収録。
”Melodies〜" は1979年リリースの
ジーン・パーソンズの2作目のソロアルバムのタイトル曲である。
亡き友とはクラレンス・ホワイトの事で、1944年6月7日生まれで1973年7月15日に29歳の若さで交通事故で亡くなっている。
 “Flying Again" はFlying Burritoの創設メンバーであったグラム・パーソンズクリス・ヒルマンが脱退後にバンド名義を受け継いでリリースされたもので、ジーン、ギブ・ギルボーが参加している。この二人とクラレンスは1967〜69年頃にロス・アンジェルスを拠点にクラブやバーで活動していた ”Nashville West*3" のメンバーでいずれもフランス系という間柄であった。
 この事故だが、ライブ撤収時に器材をクルマに運び入れようとしていたクラレンスに泥酔者のクルマが突っ込んで来たものと伝えられている。
 "Wind And Rain" の版権は ”Guilbeau-Parsons” となっているように、恐らく事故の1年後に遺された二人によって書かれたものと思われる。そして”Melodies〜" は6年後(日本なら七回忌)に同僚の手によってリリースされたことになる。
 夏が来ればクラレンスの事を思い出す... お盆は今年も過ぎてゆく。


Wind And Rain

クルマの中に座って外の雨を眺める
あれこれ考え出すと正気を失いそうだ
元の自分に戻れるだろうか
ギターを弾いて歌うなんて出来ない
あの故郷に帰りたい
窓を鳴らす風のように、海を渡る風のように、あの雲に乗って行けたら
最愛の人の腕の中に落ちる雨粒のように
この苦しみを和らげて欲しい
悪魔から解き放って欲しい
雨は降り続く
天国へ続く道など無い
いつまで続くのか誰も判らない
こんな気持ちは誰にも判るまい
伝わってくるのは風と雨の音だけだ

さあ仕事だ
ツアーに明け暮れてあれから1年
街の喧噪とやっかい事で目が覚めた
ゆっくりと息をひき取ろうとしていた彼の痛みを思うと眠れない
ギターを弾いて歌うなんて出来ない
あの故郷に帰りたい

written by Guilbeau-Parsons
from "Flying Again"


Melodies From A Bird In Flyght (for Clarence)

我が心の友
弦をベンドさせて音楽を奏でてくれた
夜、あのリズムで目が醒める
鳥が飛びながらさえずるメロディー

僕の曲に付けてくれたハーモニーは完璧
今でもいっしょに歌ってくれている
夜、あのリズムで目が醒める
鳥が飛びながらさえずるメロディー

真っ白い閃光と一輪の華を遺し
ギターのポエムは逝ってしまった
肉体は失せるとも魂は遺る
今も歌の中に聞こえている
夜、あのリズムで目が醒める
鳥が飛びながらさえずるメロディー

written by Gene and Camille Parsons
from "Melodies"

 鳥が飛びながらさえずるメロディー... なるほどクラレンスの繰り出すリックはそうかもしれない。

*1
*2
*3

Clarence White, Wayne Moore, Gene Parsons, Gib Guilbeau

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