2017.1.1
年頭所感:マーフィーの法則とは何か?

 ”バターを塗ったトーストを誤って落とした場合、塗った面がカーペットに触れる”
 ”起きて欲しく無い事は必ず起きる”

 このような ”良くある事象” を収集してまとめたもので、アメリカ空軍のエンジニアであったマーフィー大尉が携わった軍事研究の過程で得られた教訓がルーツと言われている。その教訓とは、”最悪の事態を想定せよ” と言われている。
 自分も1980年代に雑誌か何かで知ったのだが、自分の携わった仕事の中でおよそ35年後の今、おぼろげながら見えてきた事を記そうと思う。
 結論から先に言うと、”マーフィーの法則とはエネルギ保存則” である。
法則と言われるものは物理や数学のように学校で教わるのだが、世の中は法則通りにいかないことは山のように経験してきている。これは、”理想” と ”現実” と言えば良いであろう。
 法則とは理論、理想であり、曲がらないものである。しかしながら経験的に何か事象が起きた後で考えてみると、曲がっていると考えた方がしっくりくるものである。法則に従えば起きる筈がないことが現実には起きているということである。
 これは以前の”essay:エネルギ保存則は” でも触れたが、何もしなくとも ”永久” に保存されると言うことではなく、"時間の経過と伴に" 洩れるものである。エネルギ保存則はその双対として、”漏洩の法則” も成り立っているのである。 ”理想” の双対としての ”現実” である。

 曲がっているというのは下図のように、”エネルギは洩れている”、”エネルギロスがある” ということである。

 例えば、軽油1gが燃焼した場合、46KJの熱エネルギに変換できる。エネルギ保存則は1000gが燃焼したら1000倍の熱エネルギに変換できると言っているだけである。 片や、現実=”漏洩の法則” とはその熱は何もしなければ空気中に逃げてしまい、冷めてしまうということである。 だから熱エネルギに変換は出来てもロス分だけ減ったものしか取り出す事が出来ないということである。
そして、”保存(変換)” という法則や理論は未来永劫、すなわち時間の概念は無いが、”冷めてしまう” という事実は変化、すなわち時間の概念が存在するように思える。

 物事の見方というのは、”保存(変換)される” という見方と ”洩れている” という見方のように、双対、お互い表裏一体なのではないか?。
人間は保存則に従ってこうあって欲しいと未来を思い描き、期待に反した場合は漏洩則を受け入れてきたのではないか?。
言い換えるなら、時間が止まって欲しいという願いと、流れる時間は止められないということかもしれない。
 ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず・・・

 人間は保存則と漏洩則を頭の中で同時に受け入れることが苦手なのではないだろうか?
人間は右脳、左脳をバランス良く使っていろいろな局面を乗り越えてきたようであるが、言い変えれば感性と理性のジレンマであろうか?
理性は曲がらないものであり、感性とは曲がりを感じることではないか?
 しかしながら、自分の経験ではどうもバランス良く使ってきたようには思えない。どちらかというと理性が感性にブレーキを掛けているような気がするのである。

 自動販売機に150円を投入するとポカリスウェット500mLが購入できるが、もしペットボトルに499.5mLしか入っていなかったとしたらあなたはどうするだろうか?
工場で正確に計量されているのだが、現実には計量器に誤差はあると考えるのが ”漏洩の法則” である。
”その誤差が±0.1%以下なら良しとしよう” というのは心の問題、感性の問題ではないだろうか?
 ”信じる者は救われる”、”足るを知る” というのはエネルギ保存則と漏洩則、理想と現実といった双対の問題を前にして先人が繰り返して来た物事の見方であり、マーフィーの法則とこれまた表裏一体ではないだろうか?

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